テレコム九州における自己完結型エッセイ/ParaTのいけてるマルチメディア
テレコム九州は「社団法人九州テレコム振興センター」が発行する小冊子(季刊)です。

Vol.14「一挙2本立て掲載『連想ゲーム編』『政治家編』」
着眼法に関する考察と大物政治家との遭遇。
2000年9月上旬執筆(2000年10月号掲載)

(前書き)

 D社とかH社とか複数の大手広告代理店から「広告出させてくれ!」というオファーが、なんとWebラジオFMCに舞い込み、正直ビックリ!…なんでもFMCの人気コーナーの1つ『架空スポンサーのCM集』の中にポンと1つだけ本物のCMが入っている!という仕掛けをやりたいんだそうな。しかも虚々実々の奇想天外なCMを入れたいらしい。それを許諾するか拒否するかは現時点では内緒なんですが、それにしても首都圏のリーディング企業は本当によくリサーチをかけてますね。なんたってうちみたいなところを見つけだして、そのポテンシャルを徹底調査してのオファーですけんね。
福岡と熊本で出会ったディレクター、TV記者、新聞記者、広告関係の皆さん口を揃えておっしゃいます。「FMC?知らなかったぁ。そんな面白いのがあったなんて」…IT革命によって地方と首都圏の文化的格差が大幅減少しようという時代にのんびりしたもんすね。ははは・・・。


今は亡きSPAR県立劇場前店での
ちょっとした閃きの話。

 既存メディアにしてもマルチメディアにしても、あるいはメーカーや販売店にしても《企画立案》というものは極めて重要です。しかし《企画会議》は殆どの場合百害有って一利無しです。
 企画の出発点がある程度確かなものならば、後は綻びを繕う程度の《短時間のミーティング》か補完的な《メーリングリスト》でのやりとりで十分です。勿論、企画作業を円滑に進めるための「スタッフヒエラルキー」が明確化していないとダメですけどね。単純な話《組織がダメなら企画もダメ》…これParaTの法則と申します。
 まとめあげた企画が「敵を知り己を知る」身の程を知ったものであることは必須条件ですが、この企画がこと実行段階に至った際に《先制と集中》…まるで「戦争の理論」みたいですけど、これらが出来てませんと、どんなに素晴らしい企画でも必ず破綻することになっています。これはセオリーです。どんなものにでも当てはまると思いますよ。
 で、今回は《企画》その着眼点についてお話してみようと思います。
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 会議の場で何も発言せず、ただ思案にふける「考える人」みたいな表情の人っていますよね。こういう人って実際には何も考えていないんですよね。では会議室の人物をちょっと分析してみましょうか…。
 考えが脳味噌を駆け回っている時、人は物凄く近くかどこか遠〜くの何かに「焦点を合わせずに凝視」しています。時折眼球が左右に触れたりもします。そして割とはっきりと瞬きをします。

 一方、全く頭が回転していない人は、いかにも考えているんだぞという感じで悩んでいます。困ったという表情にもなります。目もサバ目で止まったままです。瞬きもあまり多くありません。こういう人って思考回路は完全に停止しています。

 さぁ、あなたが最近経験した会議では、どちらのタイプが多かったですか?
 前者のタイプが多い場合、なんだか良さそうな会議って気がしますね。ところがどっこい、下手をすると議論が百出して全くまとまらない長時間会議になる可能性があるんですよこれが…。あ、後者は論外です。すぐに配置転換を考えましょう。(冗談ですよ)
 ともかく、会議室の中ではいいアイデアなんか出るわけないですね。会議ってのはそもそも各々参加者が予め用意したアイデアを持ち込んで討議する場ですから、ここでいきなり「さあ考えよう!」と言ってもそりゃあ土台無理な話。ホントにちゃんとした会議をやりたいならば、事前に基礎的な資料と求めるアイデアの方向付けを周知徹底させて、その上で予習してもらうことが肝要です。
            ◆
 さて、会議の悪口から離れて、今度は『企画の着眼法』についてお話しましょう。キーワードは『連想ゲーム』。どうでもいいことから重要な事柄を見つけだす連想ゲーム…これこそ企画力を磨く「決め手」なのです。
 では、私がある大手食品メーカーのチルド菓子を企画した際のエピソードをちょいと御披露致しましょう。
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 ある日、近所のコンビニで雑誌の立ち読みをした後、何げに店の奥にあるドリンクやチルド食品のゾーンをぶら〜っと歩いていましたら、某メーカーのゼリーと目が合ってしまいました。見れば製造年月日がいかにも古い。消費期限(美味しく食べられる限度を示す賞味期限とは違って、食べられる限界を示す期日)もギリギリでありました。
「こんなん、誰も買わんわなぁ、返品やなぁ」と思いながら他のドリンクを手に取り、レジに向かいました。お金を支払いながら、ふと見ると店員の後ろの壁に贈答用の缶詰セットとか水ようかんのセットが鎮座しています。
「これだ!」と思いましたね。コンビニを出て家に帰るまでの10分間で企画書の概要は頭の中で完成しちゃいましたが、要するに何がどうなったのかと言いますと。

■通常、ゼリーという商品は冷蔵庫保管型のチルド商品であり、当然返品リスクが高い。
■缶詰等、常温による保存法はあるものの、フレッシュ感に欠ける。
■パックをプラスチック化し、レトルト食品と同等のラミネートフィルムで蓋をすれば缶詰の鈍重さは無くなる。
■フレッシュ感を増すため、果実をそのままの形で入れる。
■ついでに丸いパッケージを丈夫な紙(外パッケージ)で被い、他商品とのデザイン上の差別化を図ると共に、陳列を容易にする。

 これが10分間に思い付いたアイデアです。単なる思いつきと思えるこのアイデアも(確かに思いつきですけどね)その出発点には、クライアントのポテンシャルを完全に把握していたからすぐに具現化できた技なのです。

 この時のクライアントである大手食品メーカー様は・・

■レトルト食品での豊富な実績。パッケージ技術の宝庫であった。
■以前からゼリーの素を販売し、原料はいくらでも確保できた。
■フルーツソースで牛乳を固める人気商品の開発経過で、果実の成分によるゼラチンの凝固抑制作用に関しての多角的なデータが豊富であった。
■クライアントにとってチルド食品は未開拓の分野だが、常温保存の一般商品なら販路がいくらでもある。

・・ということを予め徹底研究していたので、企画から半年で商品化。関東地区のみのパイロット販売でしたが、評判が良く遂に全国販売となったのであります。もう15年近くになりますが、今でもスーパーに並んでます。
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 要するに、企画の源は世の中の至る所に転がっています。ただボーっと眺めているか「ん?なんじゃこりゃ!」という疑問符や感嘆符を発しながら世の中を漂うか、これが企画力があるかないかの分岐点です。
 企画云々についてはまだまだ語りたいことが沢山ありますが、いずれまた機会を見てお話することに致しましょう。



朝まで生テレビの司会を
実感できた?
福岡の夜の話。

「どうやらインターネットと言うものは政治宣伝に使える道具のようだ」と今頃気付く《ニッポンの指導者》がやたらと多いようで、ま、そんなもんに指示されるまでもなく、とっくにPRの道具として使っている私達は「アホか」という零下30度位の視線を彼等に浴びせる結果と相成っております。
 沖縄で行われた今世紀最悪の意味不明サミットでも、図体だけは欧米並みという《ニッポンの最高指導者》が『アイテー革命』という珍語を連発。私ゃ「そうか、Tというのは《ティー》ではなく《テー》なんだな…」と感心しつつ「そう言えば昔、ツンツンツノダのテーユー(TU)号っちゅう自転車CMがあったのぅ」なんて感慨に浸れることも出来たわけです。

 さて、こんな指導者の元では「アイテー革命なら可能かも知れないけれど、IT革命っつうのは無理なんじゃないかなぁ」そんな風に思ったりしちゃいます。ま、ごく普通の認識でしょう。

 実際、テレビの政治討論会などを拝見していますと、高名な評論家氏が日本のITの遅れを鋭く指摘する場面なんかをよく見掛けます。ま、本来インターネットが情報の高速道路だとしたら、日本国内のなんて良くて「県道」、悪けりゃ「裏路地」、凄いのになると「あぜ道」ですもんね。しかもブロードバンドの普及率では韓国より遥かに遅れてます。イマイチだと言うのは確かでしょ。

 しかし、光ファイバーだとかの分野では他国を1歩か1歩半くらいかはリードしているのもまた事実でして、中期的にみれば「まあまあ」なところを走っている御様子…。ところがですね、こういう事実を知ってか知らずか日本の政治家の多くは「予算を注ぎ込んでハッパをかけている云々」「規制緩和を進めて競争の促進云々」なんて《どうでもいい》発言しかしないんですね。

 まぁ、ダムだの道路だの《重厚長大》なものばかり作って来た彼等ですし、年齢的にも日に数百万の脳細胞が死滅し続ける宿命ですから、いきなり《IT》というのも可哀相なのかも知れません。(一番可哀相なのは国民ですけどね)
 結局は個々の政治家の資質を細かくチェックして「こいつの頭は鉄筋コンクリートだ」「こいつの頭はチップと光ファイバーだ」くらいのことは把握する必要があるでしょうね。これからの指導者選びは特に…。

 で、そんなことを少し分からせてくれるのが、選挙情報専門のWebサイトです。その名もズバリ『Election(選挙)』です。一時話題になった《落選運動のサイト》ではありません。冷静な目で選挙というものに関心を持とうというかなり中立度の高いサイトです。
 まずはアクセスしてもらうのがてっとり早いんですが、所属政党を問わずメールアドレスを持った全ての政治家への直リンクを這ってあったり、意識調査の結果が随時発表されていたりします。
 中でも注目に値するのが「現役政治家と居酒屋でトークセッション」という企画。抽選で選ばれた10名の一般市民と政治家が酒を飲みながらノンジャンルで雑談をしようというもので、去る8月中旬に第1回が福岡市で行われました。
 実は『Electionサイト』の運営ボランティアの方から、会の進行役として来てくれないか?というお声がかかり、面白そうなので快諾しました。
 WebラジオFMCも200万ページビューを数える人気サイトになってきましたので、私の知名度も少しは高くなって来た御様子。ムフフと含み笑いをする私…。

 さて、トークセッションはボランティアによる手弁当の運営なので当然ノーギャラ。ですが滅多に無い機会ですしねぇ、ともかく興味津々でしたのでホイホイと出掛けちゃいました。
 会場は福岡市の某焼肉屋。報道各社が押し掛け、かなり物々しい雰囲気。それもそのはず今夜のゲストは自民党YKKでお馴染み山崎拓衆議院議員(福岡選出)なのです。
 抽選で選ばれた10名の一般参加者、ちなみに東京、沖縄など遠方からも来ていましたが、それに進行役の私と山崎議員という構成でトークセッションのスタートです。ビールで乾杯の後、報道各社は手はず通り退席を余儀無くされます。残るのは参加者と運営スタッフだけ。ちなみに会場内の出来事一部始終を見ることが出来たメディアは私つまりWebラジオFMCのみ!「やったー!独占取材ぃ〜」…皆さん覚えておきましょう。Webラジオが既存メディアに勝った歴史的瞬間です。(威張るほどではない…笑)

 さて、国際問題、防衛問題いろいろ話があっちこっちに飛んでしまうんですが、やはり政治家っちゅうのは話が長い。切れ目が無いんだな。『朝まで生テレビ』などで田原総一朗氏がズバっとカットアウトする場面がありますが、あれは「芸」です。生半可な技能では政治家のダラダラ話を切ることは出来ないですね。
 かく言う私も最初はリズムをつかめず「参ったなぁ」と思うことしばしばだったのですが、持ち前の適応力の高さとビールの勢いで、「で、政治家っていうのは何で料亭でばっか密談をするの?」なんてズバッと聞いてしまい、かのYKKの一角を閉口させちまいました。「返す言葉がない。いいんだぁ料亭は(笑)」という言を引っ張り出してしまいました。

 ITについては「やはりそうなのね…」程度の言しか出て来ず、若干がっかりさせられましたが、秘書を務める娘さんがWebサイトの運営、メールの管理等を引き受けているそうで、それなりに対応できる環境を整えているとの由。ま、ここは目をつぶりましょう。
 それにしても、最初に述べたように政治家の多くが『我が国のITの現状と将来』を語れないのは、不勉強である以前に、国民に対し具体的に何がどうなのかをアピールする《プレゼンテーション能力》が大幅に欠除しているのが原因!と断ずる私は、会の最後の最後にこれについての回答を求めてみました。山崎議員は「全くその通り。不勉強の極み。努力します」と驚くほど率直な返事。あらら正論だったのかしら僕って…なんて思うほどの呆気無い幕切れでした。
 それにしてもこういうイベントがWeb先行で行われ始めているわけでして、ルーチンワークにあぐらをかいた既存メディアの危機感が高まることは間違い無い事でありましょう。
            ◆
「執筆後記」
 最近、このページに対するリアクション多いですよー。今まで殆どなかったのにね。(笑)
 今回ご紹介した「選挙情報専門サイトElection」のURLはhttp://www.election.co.jp/です。 ●私宛ご意見・ご感想・出演依頼はEメールtaneda@fmc.or.jpまでお気軽に!

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