■ストーリー

ある日、熊本城近くの公園で公開放送を行っている。そこに居るのは、ミニFMブームをファッションとして捉え、超お気軽に参加した女子高生達。3つの高校それぞれに派閥を形成し、女子高生ならではのドライさといい加減さで、自己満足なDJごっこを楽しんでいる。
極めてお気軽に自画自賛トークを続ける彼女達をディレクター兼ミキサーとして冷静に見つめる《2番》・・。
彼女達の姿の向こうに見える熊本の街並。
「これが熊本だよな・・」
《2番》の目を通して、地元のカルチャー、メディア、市民の無関心さなどへの戸惑い、怒り、フラストレーションがモノローグとして語られて行く。

ひとまずイベントが終了して、《2番》は独り黙々と撤収作業中。だが女子高生達1人として手伝おうとはしない。派閥ごとに固まり、勝手に盛り上がり、他者に冷ややかな視線を送っている。
「やめた!」
《2番》が最初にキレた瞬間だった。
その場で全員を『首』にして立ち去る《2番》。
啖呵を切ったのはいいが、大量の機材を独りで運ぶハメになってしまった。
ミキサーのハードケースを転がし、肩からデンスケ、大きめの機材バッグなどをぶら下げ、手にはマイクスタンドを持ち、普通では考えられない量を独りで運んでいる。当然、鬼の形相である。

やっと帰り着いた。
機材を家の中に放り込み、床にへたり込む《2番》。目に映る機材の山。・・ふと我に返り、自分がやっていることを見つめ直す。「いったい俺は何がやりたくてこんなことを続けているんだろう」・・ブツブツ言いながら悶々としている。
そこへ《5番》がフラリと表れる。
今日の顛末が語られる。いつの間にか酒を飲み始める2人。酔いが回ると共に【熊本のいろんなものへの批判】のボルテージが上がっていく。
「祭がボシタレベルだもん」
「見てもつまらん、参加してナンボ・・皆がそう言う、そう言って諦める」
「中には見るだけで面白いという変わり者も居ることは居るな」
「じや、暴走族と一緒じゃねーか」
「74式戦車で踏みつぶせはいい」
「迫撃砲で十分だ」
「火の国まつりは?」
「鶴屋の屋上からガソリン撒いて燃しちまえ」
「阿鼻叫喚〜!」
「生き地獄に乾杯〜!」

そのまま酔いつぶれる2人。
ふと目を覚ます《2番》。
「で、俺は何がやりたいんだ・・」

翌朝・・電話のベルが鳴る。
それは、東京のフリーライターからの取材依頼の電話だった。
話がよく飲み込めない《2番》であったが、寝起きということもあって受動的に取材を了解してしまう。
《5番》が起きてたので事情を説明するが、要領を得ない。
そこへ再び電話のベルが。
《4番》からの電話だった。
「取材の依頼が来たでしょ。私が宣伝しておいたのよ!」
やっと事情を飲み込むことが出来た《2番》と《5番》であった。

数日後。ライターがやって来た。
どこか辿々しい《2番》と《5番》・・。
「やっていて愉しい?」
「うーん。どうだろう・・」「惰性っぽいな」
「誰に聞かせたいの?」
「え?」
答えに窮する《2番》。
《5番》が口を開く。
「地元の番組ってつまんないんすよ。それを面白く変えたい・・のかなあ・・」
「ただ目立ちたいというのではないようだね」
「そうなんすかねぇ」

ぼんやりとした何日か経った。
結局やりたいことが見つからず、部屋の中で独り悶々としている《2番》。
テレビから流れるローカル番組。
「いいよなぁ、こんなんで仕事になるんだから・・」
ブツブツ言っているところに電話のベルが・・《4番》からだ。
「ライターさん、面白がっていたわよ。今度開局するFMの部長に紹介したって。明後日、挨拶に行って来なさい」
「はぁ?」
「半径100メートルより、やりたいことがやれるよ」
「なんだそりゃ?」

・・ここから大きなうねりが彼等を包んでいく。