所謂日常日記
榎田信衛門「鯨のしっぽ」
本を読む、テレビを見る、
街を歩く、田舎を彷徨う、
物を喰らう・・。
日々の出来事の中で、
一瞬「海馬」に蓄積された記憶を
このページに綴っていこうと思う。

「海馬(hippocampus)」
大脳の古皮質に属する部位で、欲求・本能・自律神経または記憶に関する中枢器官。


第107回

9月15日の日常から・・

また胸くそが悪くなる事件だ。

福岡県二丈町で起きた「人質立てこもり事件」で、
人質となっていた小学3年生の女の子が腹部を刺されて死亡した。

警察が突入した時点で、
既に殺害されていたという見方もあるようだが、
ちなみに犯人は少女の叔父である。

覚醒剤やら焼酎やらで無茶苦茶な状態であったらしい。

すると《心神耗弱状態》ってやつか?
裁判で情状酌量を巡っての醜い争点になるんだろーな。

話がちょいとズレるけれど・・。
1969年に放送されたテレビドラマ『怪奇大作戦』というのがある。
制作は円谷プロ、放送はTBSであった。

放送時、あっしは6才だったが、
同じ枠で放送されていたウルトラシリーズよりビビビと来るものがあって、
「科特隊ごっこ」より「SRIごっこ」を好んでいた。

その『怪奇大作戦』の第24話に《狂鬼人間》というのがある。
放送倫理上、扱いが困難なテーマであるため、すぐに欠番扱いとなり、
再放送等は御法度(!!)の秀作である。
あっしは本放送の時も勿論観ているが、
後にLD(レーザーディスク)で10回くらい観ている。

ストーリーはこうだ。

キチガイ女が男を刺し殺す・・。
精神鑑定の結果、女は重い精神異常者であると断定される。
つまり刑法第39条により無罪。
僅か2ヶ月後、女は完治してのうのうと退院してしまう。

高利貸しがキチガイ男に日本刀でバッサリ斬られる。
続いて料亭の前ではキチガイ男が銃を乱射。客と芸者が撃ち殺される。
犯人は皆精神鑑定の結果「無罪」・・。
そしてやはり数ヶ月後には犯人達は何食わぬ顔で退院していくのである。

短期間に正常に戻る犯人達に不審を抱いたSRI(科学捜査研究所)の
メンバーが捜査を開始。
そして遂に「狂わせ屋」の存在を掴む。

「狂わせ屋」とは、
特殊な脳波変調機によって客を一時的にキチガイにさせ、
そして「合法的に」殺人を実行させる!・・という闇の商売である。

狂わせ屋・・美川冴子は元々脳波の研究に携わっていたが、
かつて精神異常者に夫と子供を殺された過去を持っていた。
犯人は刑法第39条で無罪。
美川冴子は犯人に復讐を誓ったが果たせずにいた。

その無念さが増幅。
精神異常者の犯罪が無罪になるようなこの社会に復讐するため、
脳波変調機を使って「狂わせ屋」となったのだった・・。

逮捕寸前。
冴子は、自ら脳波変調機を装着。
最大出力をかけ、2度と元に戻らない精神錯乱になる。
「彼女はもう一生あのままだよ・・」
もの哀しいエンディング・・・。

相当ダイジェスト版になっちゃったけど、
大体こんな感じのストーリーである。
1話30分のドラマだかんね。展開は早い。
でも、どーだい?放送出来ないだろ・・。
(キチガイという単語がこれほど多い番組も珍しい)

まぁね、現実に「狂わせ屋」は無いにしても、
社会構造の歪みや、
得体の知れない食い物や、
ともかくいろんなものが、
人をどんどん狂わせていってるような気がする。

だからって、それらが犯罪者の免罪符になるわけではない。

死せる者に人権は無い等しく。
殺す者に人権は篤(あつ)い。

生命を奪うような重大な罪を犯して拘禁されたとしても、
その者の衣食住は《国によって保証》され、
概ね数年後には「のうのう」とシャバに帰ってくるのである。

『怪奇大作戦』第24話《狂鬼人間》が訴えたいテーマはまさにこれで、
更正という美名の下で狂気を容認する現代社会に対するアンチテーゼである。

だが、最初に放送された1969年から33年経った現在も、
何も社会は変わっちゃおらん・・。

報道によれば、人質となって殺害された女の子はまだ9才。
たったの3000日しか生きる事ができなかった。

犯人は36才であるという。
日本人男性の平均寿命は約77才か・・。
こいつはあと15000日も生きる可能性がある。

福岡県警の対応が適切だったかどうか、
今後検証が進むと思うが、
いずれにせよ「きっと誰かが助けてくれる」と信じていた幼い心を
救うことが出来た大人は、
この世に1人も居なかったことだけは確かである。

ああ、胸くそが悪い。


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