所謂日常日記
榎田信衛門「鯨のしっぽ」
本を読む、テレビを見る、
街を歩く、田舎を彷徨う、
物を喰らう・・。
日々の出来事の中で、
一瞬「海馬」に蓄積された記憶を
このページに綴っていこうと思う。

「海馬(hippocampus)」
大脳の古皮質に属する部位で、欲求・本能・自律神経または記憶に関する中枢器官。


第082回

8月14日の日常から・・

FMCは基本的に誰でも入れる。(だからレベルが低い)
だが、あっしの正式な『弟子』になるってことになると、
ちょいとハードルが高くなる。(だから誰も入らない)

ちなみに弟子(らしきものも含めて)はこれまでに11人いる。
※萩尾望都ではない。

11人全員東京で弟子入りした連中で、
FMCとは全く関係が無い。
そのうち3人が現在も放送作家とかテレビ番組のプロデューサーとか
それなりに活躍中である。
今も、1つ秋の特番を師弟コンビでやっつけ中で、
企画の中身について、いろいろと連絡を密にしているのだけど、
まぁね。気心が知れているから、多少無神経な議論でもやり易い。

ちなみに残りの8名は、ギョーカイの水が合わなかったり、
全く稼げなかったりで、
今は郷里で家業の酒屋を継いでたり、介護士をやっていたりで、
所謂《カタギ》に戻っている。

もう10年以上新弟子はとってない。
だから弟子と言っても今やおじさん・おばさんばかりである。(失礼)

あ、ハードルの話をするんだった。

「最低3年は働かなくても食っていられること!」
・・これが弟子入りのハードル。

つまり・・《食いつないでいく貯えがある》とか
《親のスネをかじり続けられる》とか
《パトロンがいる》とか・・
ま、方法は何でも良い。

要は、修行に専念する環境にあるか否か?ということである。

この道に入る前にいろんな職業経験があるのは全く構わないが、
いったんこの道に入ってからバイトとかしてたら、まず伸びないのよ。
「絶対伸びない!」とは言わんけど、やはり集中は出来んよねぇ。

三宅裕司率いる『SET』も劇団員は全員バイト禁止だったと思う。
理由はあっしのそれと多分同じ。

ちなみにバイトは職業経験としてプラスになるか?

これも「ならない!」とは言い切れない。
しかし、大した経験値にはならねぇだろーな。

我が弟子には多分こう言う・・
「バイトしてる時間があったら、徹底的に遊びまくるか、
必死こいて企画書なり台本なり書いてみろ!」
・・これが種田流である。

15年くらい前の出来事。
後輩が役者を目指して熊本から東京に行くと言う。
あっしは「どうやって食ってくの?」と聞いた。
後輩は「ヒモ・・です」と答えた。
「そうか、頑張れ・・」固い握手をする2人であった。
そして奴は本当にヒモになった。
でも数年後、挫折して帰って来たけどね。(笑)

もう1つ昔話をすると・・。
以前のFMCって、現状からは全く信じられないほど《活気》に溢れていた。
毎日毎日、喧々囂々(けんけんごうごう)のハイテンションな議論が続き、
ほぼ24時間営業で、無茶な夢を語り合っていた。

ちなみにアナル島田とかは、その頃の《熱さ》を知っているもんだから、
現行スタッフの《線の細さ》に何かと苛立ってしまう。

では何故、当時のスタッフが異常に熱かったかと言うと・・。
簡単な話「暇だった」のさ・・。

大体、バイトも大して重要ではなかった。

車も持ってないし・・
携帯も持ってないし・・
洋服に気を使うでなし・・
グルメでもなし・・
貧乏が楽しいし・・

せいぜい、毎夜続く熱い議論の潤滑剤として「安酒」と「チンケな肴」を
用意するくらい。

下宿(FMC武家屋敷と言われた)にエアコンなんてものはなく、
電話も大家さんの取次ぎである。

夏場、気温が高いところから低いところに引力が生ずるのは当然のことで、
FMCは一気に難民収容所と化すのである。

「果たしてエロビデオは連続で何本まで視聴に耐えられるものか?」
そんな話を誰かが振る。
直ちにビデオ屋に直行!朝までエロビデオ連続10本マラソンが始まるのである。
※これは「戦艦ポチョムキン」「旅芸人の記録」「十戒」を連続で見る位、非常に辛い。修行と言っても過言ではない。

「熊本に外タレを呼ぶとしたら?」
「果たして熊本から全国ネットの番組は作れるものか?」
「無人島を買って日本から独立することは可能か?」
「映画はいくらあれば撮れる?」

そんな荒唐無稽な話題ばかりであったが、
性別・年令差は一切無関係で、下らなくも熱い会話がFMCの売り物だった。

今はと言うと・・・。
なんだか小ぢんまりとしちゃったねぇ。(笑)

FMCが、というわけではなくて、
世の中の若い衆が・・という一般論でなんだけど。

車の維持管理や・・
かさんだ携帯料金や・・
洋服のいろいろや・・
雑誌で見た美味しいものや・・
あとは、恋愛か。

何かとお金がかかる。

だから必要に駆られて沢山バイトをする。
暇な時間は確実になくなる。
せっかく残った時間も、ややもすると虚栄心を満たすためや、
不景気による将来の不安感を払拭するいろいろな作業に消費される。

当然、若い時に大切な「熱いもの」もなくなる。
ここで言う「熱いもの」というのは、
《暇な時間を大量に見繕って、下らない物事を延々と議論すること!》
《何かしら1つのことに熱中して、自己満足でもいいから燃焼しきること!》
この2点である。言い切ってもよい。

下らないことに真剣になるからこそ、
人は成長するのである。
我々はホモルーデンスなのだから!
※意味が分からんやつは自分で調べろ。

さてさて2002年である。
FMC27年の歴史の中で、
それこそ最強のインフラを有しているが、
スタッフのモチベーションはと言うと、むしろ低調である。

こんな事を書くと、落ち込んでしまうスタッフもいるだろうが、
でも事実である。

誰が良い、誰が悪いではなく、
半ば拝金主義とも言える現代社会を普通に漂っているであろう若者の
世間一般の風潮(時流)であるから、仕方が無いと言えば仕方が無い。
物心ついた時分から染み付いちゃってるんだから。

つまりあっしには「手の施しようが無い」と言うことである。
あとは個人の自然治癒能力に期待するしかないわけ。

最近「鉄観音沼田」という一見無骨な男が入って来た。
これがなかなか熱い男で、80年代スタッフの熱気を彷佛とさせるのである。
でも、今のFMCでは彼のようなキャラはむしろ奇異に写ってしまう。
これは非常に残念なことである。

先週のミーティングで鉄観音沼田が《答えの見えている疑問》とか
《やってみなければ分からない疑問》とかを連発してきた。
正直あっしは面白いと思ったよ。

この《無駄なエネルギーの使い方》を、(笑)
他の同年代スタッフが果たして共有できるかどうか?
これはFMCにとっても結構大きな問題かもしれない。


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